2022/03/17 17:01
野鳥の撮影。
それには多大な行動力と忍耐力が必要となる。
険しい道のりを野鳥を探し、痕跡を見つけ、そして野鳥が訪れるまで息をひそめてシャッターチャンスを待ち続けるのだ。
その為、野鳥の撮影には健やかな体と健全な精神が必要だ。
もず吉は考える。
ではこの二つを両立するために何が必要なのか。
それは質の良い睡眠と、何より「食」であると。
これは野鳥撮影に赴く、一人のSONIDORIスタッフの「食」に対する忘備録である。
二日目。
もず吉は朝の開店と同時にバードウォッチングカフェを訪れ、じっとその時を待っていた。
観察小屋の中、指定された席でコーヒーをチビチビと飲む。
身に染みる寒さに堪えながら、カメラを構えて今か今かとある鳥を待ち続ける。
それはもず吉が一目ぼれして、野鳥撮影にのめりこむきっかけとなった鳥。
その名もシマエナガ。
鳥類界のトップアイドル!
もず吉は今、シマエナガに会うためにじっとその時が来るのを待ち続けているのだ!
、、、がしかし、じっと待ち続けていても新陳代謝というのはあるわけで。
寒いから余計に、もず吉の身体は蓄えられたエネルギーをたくさん使って体温を維持しようと頑張っている。
あぁ、そうすると、やっぱり。
お腹がすいた。。。
お昼の予約注文は既に済ませてある。
お昼の時間になって、店員さんがもず吉に声を掛けてくれる。
待ってましたよ、この時も!
早速カメラをテーブルの上に置いて、もう待てないとカフェの中に急ぎ足。
鳥はいくらでも待てるんだが、空腹には勝てないんだよなぁ。
室内に冷気が入って迷惑にならないよう、必要最低限でドアを開けて中に入る。
入った瞬間にぶわっと室内の温かさを肌で感じ思わず、はぁぁぁっと長い溜息を一つ。
人間っていうのはやっぱり、温かな場所が好きなんだねぇ。
なーんて室内の温かさに幸せを感じながら、用意された席に座る。
目の前にはすでに温かなスープとコーンスロー、そしてバジルホットサンドが用意されている。
温かいスープ。
湯気が立つ目の前のスープを前に、もず吉ははるか昔の国語の教科書を思い出す。
あの時読んだ物語とはシチュエーションも、何もかも違うかもしれないが、間違いなくこのスープは「温かいスープ」だ。
うん、それだけは変わらないはず。
スープをスプーンでゆっくり一掬いして飲む。
噛みしめるようにして味わう。
トマトの酸味が喉を通り抜けて、香草の豊かな香りが鼻を抜けていく。
目を閉じてほぅっと、安堵のため息。
キンキンに冷えた身体に沁みわたる!
これは安心だ。
予想通りの味。
堅実なトマトスープ。
何物にも代えがたい、今もず吉が求めているスープど真ん中ストレート。
これが飲みたかった。
こういうのじゃなきゃいけない。
そんなスープ。
一口飲むたびに、もう一口が飲みたくなる。
あぁ、気が付けばスープは無くなってしまった。
もう少し飲みたかったと思わせる。
とても美味しいトマトスープでした。
とある昔、とある国のユースホステルに泊まった時。
生まれて初めてハード系の黒パンを食べた。
それまでは白パンしか食べたことが無かったように思う。
あの時は衝撃だった。
こんなに美味しいパンがあったのか、と。
その豊かな酸味。
噛むほどに拡がるライ麦の深い味わい。
今までパン自体に酸味を感じるなんて考えていなかったから、本当に驚いた。
もず吉も若かったから、旅の空腹や情緒なんてのも相まって味に補正はあったのかもしれない。
でもあの時からかな、ハード系の黒パンが大好物になったのは。
話はそれたけれど、視線は目の前のホットサンドに釘付けのもず吉。
美味しそうだ。
思わずゴクリと喉が鳴る。
ばり!
もぐ!
もぎゅ!
もぎゅ!もぎゅ!
もぐもぐもぐ!
お分かりいただけただろうか?
もず吉の食事。
まずは噛み切る。
そして口の中に含み咀嚼を始める。
トマトスライスとモッツアレラチーズ、そしてバジルペースト。
口の中でハーモニーを奏でる。
一度混ざり切ったら後はしっかりと味わって咀嚼する。
ごくんっ、と喉を通り抜けた最初の一口。
とても美味しい。
ハード系のパンは食べ応えがあって嬉しい。
続いてコールスローを一口。
うん、さっぱりしてこれもとても美味しい。
さらにもう一口ホットサンドを齧って、コールスローも一口頂く。
系統の違う爽やかな味を交互に楽しむ。
そうだ。良いことを思いついた。
このコールスローを残りのホットサンドに挟んで食べてみよう。
残りのホットサンドにコールスローを挟んで、パクリと一口。
おぉ、これは凄いぞ。
少し時間がたって、しんなりとしたトマトスライスのエキスがパンにしみ込んで、そこにコールスローのエキスが追っかけてきている。
パンにしみ込んだバジルペーストが良い仕事している。
モッツアレラチーズのコクも負けていない。
味の四重奏かと思いきや、コールスローにされた野菜たちが我も我もと味の中心でハレルヤと叫ぶ。
あぁ、これが讃美歌か。
最高のシチュエーションで、最高の昼食を頂くことが出来た。
さすがバードウォッチングカフェ!
ここまで計算されつくしているとは!
ごちそうさまでした!合掌
来てくれました!
シマエナガ!
はじめて生のあなたが見れて幸せです!
本当に素敵な鳥!
姿を見せてくれて、本当に本当にありがとうございます!
『北海道探訪編 2日目 夜 クマゲラとポテトサラダ』