2021/11/12 13:49

野鳥の撮影。
それには多大な行動力と忍耐力が必要となる。

険しい道のりを野鳥を探し、痕跡を見つけ、そして野鳥が訪れるまで息をひそめてシャッターチャンスを待ち続けるのだ。
その為、野鳥の撮影には健やかな体と健全な精神が必要だ。

もず吉は考える。
ではこの二つを両立するために何が必要なのか。
それは質の良い睡眠と、何より「食」であると。

これは野鳥撮影に赴く、一人のSONIDORIスタッフの「食」に対する忘備録である。


肌寒くなってきたこの季節。
夕方5時まで撮影を続けたもず吉。
辺りは夜の帳が下りはじめ、すれ違う人の表情はどこか寂しそうに感じる。 
しかし、対照的にカワセミの可愛い写真が撮れたもず吉はホクホク、ペカーである。
心も体もぬっくぬくだ。

しかし長い間集中してカワセミを撮影したのだ。
その間食事をすることはなく、カワセミの鳴き声に耳を澄ませながら、カメラをひたすら構えていた。

今のもず吉には圧倒的に不足しているものがある。
それはペコペコになった腹を満たしてくれる美味い飯である。

さぁ、飯を食いに行こう!

それから宿に到着してチェックイン。
撮影した写真をチェックしたいという気持ちに後ろ髪惹かれながらも、いやはやどうして、足は食事処に速足に向かっていく。
はやく腹に何か入れて落ち着きたい!
もうお腹ペコペコのペコ吉なのだよ!


食事処に入店後は優雅に着席。
背筋を伸ばし、はやる気持ちを抑えてゆっくりとメニューのページをめくる。
早速お一人様向けの御膳メニューが目に飛び込む。
これはこれは。
刺身に馬刺し、辛しレンコンに、ん?人文字ぐるぐる?
なんだろう、これはいったいどんな料理なんだ?
人の文字を模した和え物か何かなのか?
まぁ、悩んでいても仕方ない。
ごはん、みそ汁、サラダ、漬物がお変わり自由なのはかなりポイントが高いな。
熊本の名物がこの御膳に集約されているといっても良い。
あぁ、お腹からもず吉の鳴き声が聞こえてきそうだよ。


もず吉のお腹は想像以上にペコペコだ。
今回は単品でいろいろ頼んでやろう。いや、そうするべきだ。きっと何もかもうまくいく。
もう期待しかそこにはなかった。

いただきます!合掌

まずはシーフードとアボガドのサラダ。
うん、サラダから入るのは基本。
食事の順番は大事なのだ。
甘めのさっぱりしたドレッシングをかけて食す。
ぷりぷりのエビと貝柱、アボガドの濃厚な味わいとしゃっきりポンと口の中でハーモニーを奏でる手助けをしてくれるオニオンとドレッシング。
いや、これはこれは、思わず悪い顔をしてしまいそうになる。
しゃきしゃきの食感が嬉しい。
これはこの後の料理も期待出来るに違いない。


しかし何はともあれ、刺身ですよ。
海に囲まれた島国日本。
そこに住まう人間で魚が好きな者には最高の環境じゃあないか?この国は。
あぁ、分かるぞ!
食べなくても美味いのが分かる!
目の前に現れたのは天草の海で獲れた新鮮な魚介類君たち+他の海の子たち。
こういう時、何から食べようか迷う。
でも慌ててはいけない。
迷い箸などもってのほか。
目の前の飯は逃げない、待っていてくれる尊い存在なのだ。
心の赴くままにまずはマグロを口にする。

ふひっ

おっといけない、思わず下品な声が出てしまった。
紳士。紳士。
気を引き締めなおして、次はタコを。

ふひひっ

駄目だよ。気持ちを落ち着けよう。
落ち着いて、美しく食べるんだ。
次は、そうだ。鯖にしようかな。

あひゃひゃぁ

あぁ、仕方がないじゃないか。
だって美味いんだもん。
あぁ、幸せだなんだもん。
口の中で蕩けていくんだもん。


いかんいかん、完全に意識を持っていかれるところだった。
ここは一度ピリッとしたものを口にして、しゃっきりとしよう。

おやおや綺麗な黄色じゃないか。
皿も素敵。
実に熊本名物らしい辛しレンコンってやつだな。
このレモンのような綺麗な色。
そういえばあの夏会えたキビタキは美しかったな。
うん、あのオスは男前だった。

端の方からポリポリと。
下品になりすぎないように食す。
辛すぎない丁度良い塩梅の辛しレンコンのうま味。
あぁ、意識がはっきりしてきた。
考える余裕が出来てきた。
ここはもういっちょ熊本名物と行きますか。


ヒン、カララ、ヒン、カラカラカラ、ヒン……

目の間に供された馬刺しを見て、思わずコマドリの鳴き声を心の中で呪文のように唱える。
熊本名物馬刺しちゃん。
熊本の名物って何が一番好き?って言われたら。
そりゃぁもちろん馬刺しと答えるもず吉です。
ラーメンも美味いよ?ほかにも天草大王や、辛しレンコンetcetc.....
地元の人しか知らない名物もきっとあるだろう。
それでもね、馬刺しが好きなの。
好きなのよ。
部位ごとに違う、とろけるような旨味。
口内に広がる滋味。
馬というだけで何か特別感があると思うのはもず吉だけ?
薬味のショウガとネギも名わき役として、味にアクセントを利かせて素晴らしい。
あぁ、ますます腹が減っていくようだ。


さぁ、ここからはがっつり行こう!
もず吉の胃はまさに今溶鉱炉だ!
現れたのは湯気を上げる阿蘇地鶏の炭火焼。
あぁ、こんなの不味いわけがないだろぅ。。。
早速豪快に口に頬張る。

じゅんじゅわわぁぁああ。

拡がる拡がる甘い肉汁。
もう言う事は無いですよ。
だって美味い暴力だもの。
黙らせられちゃうんです。
柚子胡椒を付けて、再度頬張る。
あはははは、もう理不尽に笑うしかないね。
だって美味いんだもん。


今日の〆は何かって?
肥後牛のステーキ!
ステーキはラスボスだ。
憧れの食べ物だ。
鉄板に載っていればなお素敵さが増す。
素敵なラスボス様こんばんは、そしてさようなら!
もず吉の胃袋がステーキをロックオンだ。

くぅぅぅぅぅうううう!!!

ほとばしる。
思わず天に向けて顔が上がる。
目をつむって、手に力が入る。
握りしめる割りばしを思わず折ってしまわないか心配になる。
タンタンタン、ドンドンドン!
思わずテーブルをたたきそうになる。

これ、これなんですよ〆というのは。
この食事という物語は君を食すことで終わり。
フィナーレを迎える。
そしてまた明日への撮影の活力となる。
もう今日取り込んだありとあらゆる食材は全てこのもず吉の血肉となって、より良い写真を撮る為の活力となるのだ。
大満足!

ごちそうさまでした!合掌

あぁ、熊本の夜は恐るべし。
とても美味い夕食だったぁ。。。
そういえば、最後まで人文字ぐるぐるってなんだったか分からなかったな。。。
まぁ、いいじゃないか、この事は忘れよう。
ありがとうございました!
明日は朝も早いんだ。ゆっくり寝て英気を養おう!
さぁヤマセミさん、待っててね!


ヤマセミさん、待ってた!

次回 野鳥とグルメ 『熊本探訪編 2日目 昼 コウノトリと よかとこ八女茶蕎麦セット』に続く。